生き続けるには、生かされるには③

シリーズ化してしまった。
ナナの物語。
こんにちは、ギミクリーズの田中です。
(ビジネスの話をするつもりだったのに。
最終的にはつながるはずだが・・)
では、第3話。
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ダンボール箱から何やら音がする。
中を覗き込むと、
ナナが前足をバタバタさせている!
「ナナが動いた!!」
眠りながら歩く夢でも見ているのか!?
それとも起き上がろうとしてる?
ちょっと手助けしてみる。
すると、
弱々しくではあるが立ち上がったのだ。
そして、
おぼつかない足取りで、
ダンボール箱の中を左回りに、
ヨチヨチ歩き始めた。
「ナナが歩いた!」
その後、
箱の内壁にコツンと頭をぶつけて、
コテンと倒れた。
その姿が何とも言えず愛くるしい。
息子が初めて歩き出した時のことを思い出した。

流動食を注入器で口に含ませる。
ペロペロと舌を動かせるようになった。
「自分で舐めることができるかも」
お皿にミルクを少し入れて、
顔を近づけさせる。
しかし、
頭を下に下げることができない。
頑なに拒むのだ。
それどころか、
後頭部が背中につくほど反り返ってしまう。
仕方なく首を元に戻して、
お皿の方を鼻先に近づけてみる。
全く反応しない。

「何かがおかしい」
ナナの目の前で指を左右に動かしてみる。
目が指を追わない。
瞳孔も動かない。
指を前後に動かして目前に近づけてみる。
目を閉じない。
普通は条件反射で瞬きするはず。
「ナナは、目が見えていない!」

今度はより匂いのある、
ペースト状のキャットフードを鼻先に近づける。
やはり反応は無い。
どうやら嗅覚にも異常があるようだ。
口先につけてやるとペロッと舐めるが・・

次に顔の近くでパンと手を叩いてみる。
全く驚く様子も嫌がるそぶりも見せない。
「耳もか・・」

座らせてみる。
どんどん首が左に傾いていく。
左を向きすぎてバランスを崩し、
コテンと転がる。
さっきは愛くるしいと思えたその姿に、
今度は悲しみが入り混じる。

「この子は脳に障害を負っている」

狭いダンボール箱の中だから、
左回りクルクル歩いていたのではなかった。
その場で、左向きにしか、動けないのだ。
頭をコツンとぶつける可愛い仕草は、
目も、耳も、鼻も、
何も感じることができないからだ。

このことを獣医さんに話す。
「確かに反応はありませんね。
この子は今、
意識すらないかもしれません。
歩くのも本能的に動いてるだけ。
餌を舐めるのも、
口の中に何かが入ってきたから、
反射してるだけしょう。
救いとしては、
痛みを我慢しているわけではなさそうだ、
ということです。
ずっと夢をみてるのかもしれません。
でもこれは、
「猫として猫らしく」
生きている状態ではありません。
厳しいですね・・
治療を続けても回復の見込みは低いです。
どうされますか?」

「覚悟はしています。
ただ、できることがまだあるなら、
してあげたいです。」

「分かりました。
子猫にはあまり使いたくないのですが、
ステロイドを注射してみましょう。
これで脳の炎症が治まることがあれば、
また少し反応が変わってくるかもしれません。」

ナナと私、嫁さん、息子、
奇跡を願って、
「生きようとするもの」と
「生かそうとするもの」の
四人十脚は続く。
(つづく)